ミュージシャン


The Jon Spencer Blues Explosion [Wikipedia] [YouTube] [Amazon]
ブルースの爆発という、なにやら妖しげなバンド名。聴いてみると、なるほど、確かに爆発している。しかも、なかなか屈折した爆発の仕方だ。(笑)
略称はジョンスペJSBXなど。
「爆発」というバンド名から想像されるようにパンク的な要素もありますが、パンクのように何かの衝動を世界に向けて発散しているような、開放的なイメージというよりは、
地下室の中で黙々と演奏を繰り返し、密室にこもったロックの破壊的なパワーに酔いしれているような感じでしょうか。どこか危ない雰囲気も魅力です。作品を経るごとに実験性も増してきて、もはや呪術的な印象さえ。
メンバー
ジョン・スペンサー
「ニューヨーク」と「ロックンロール」をこよなく愛する、JSBXのフロントマン。
ボーカルとギター担当。ギターは歪みまくって低音に迫力のある独特の音色で、直情的にかき鳴らす。
ジュダ・バウワー
ギター担当。ジョンと比べるとギターの音色は歯切れがよく、演奏も相対的にテクニカル。2人の息はぴったり。
ラッセル・シミンズ
ドラム担当。走りもタメもお任せあれ、ハチャメチャなJSBXの世界観を支える万能リズムボックス。 (Wikipediaによると「人間ビートボックス」と呼ばれているらしい。)
ディスコグラフィー
01. Crypt Style (1992)
02. Extra Width (1993)
EP. Mo' Width (1994)
03. Orange (1994)
EP. Experimental Remixes (1994)
04. Now I Got Worry (1996)
05. Acme (1998)
EP. Acme Plus (1999)
06. Plastic Fang (2002)
EP. Fang Plastique (2002)
07. Damage (2004)
08. Meat + Bone (2012)
09. Freedom Tower: No Wave Dance Party 2015 (2015)
代表曲、オススメ曲・アルバム
Wail比較的ポップなものを選ぶとすると、こちら。ロックで勢いもあり、彼らの演奏力を堪能できます。
She Saidこちらもポップで聴きやすい。パワフルな演奏で、曲としてもよく出来ている。
Betty vs. the NYPD9thのリードトラック。ベテランらしいツボを抑えた演奏が印象的。以下は彼らならではの特色がよく出た曲を挙げます。
Afro2ndからのシングル。ひねくれたソングライティング、渾然一体となったパワフルな演奏が2ndの特徴。
Bellbottoms3rdからのシングル。人気な曲だけど、ちょっと実験的過ぎて呆気にとられてしまうかな。(笑)
Dang3rdから。こんな感じで、緩くて過激な演奏・自由なアレンジが3rdの特徴です。
2Kindsa Love4thからのシングル。4thにはややスタンダードでロックな楽曲が多数収録。演奏は非常にタイトでまるでダイナマイトのよう。
Bag of Bonesジョンの自由なボーカルもJSBXの大きな特徴。他にもその傾向が顕著なのは Blues X Man など。
3rd. Orange 一番JSBXらしいアルバムを選べと言われれば、やはりこれになるでしょうか。出世作です。 しかし演奏・アレンジが自由すぎて人を選ぶかも。(笑)
2nd. Extra Width こちらは「Orange」の一つ前のアルバムですが、洗練されていて、ツボを抑えた強烈な演奏が特徴。
後に多彩な展開を見せるJSBXの原点と言えるでしょう。この2nd、そして3rdと聴いていくのがいいのかな。
4th. Now I Got Worry 「Wail」という分かりやすいキラーチューンもあるし、こちらもいいかもしれません。
ただ、全体の流れの緩急は激しく、アルバムとして聴きやすいかというと、微妙なところ。(笑)
2nd、3rd、4thと聴いていくと、いいのかもしれませんね。

1. Crypt Style (1992)
この人たちの初期の作品はゴチャゴチャしていてよくわからないのですが、実質的なデビューアルバムとして、こちらをご紹介しておきます。
このCD自体も国によってバージョンが違い収録曲もかなり異なるとか。どうやら私が手にしたのはドイツ版のようです。
次作の「Extra Width」でJSBXの世界観は確立された(と私が思ってるだけですが)感がありますが、このアルバムはその過渡期にあるのでしょう。
かなり雑然としていて、もはや前衛的。少しキャプテン・ビーフハートっぽい雰囲気さえあります。
若々しい粗さがあり、パンキッシュなアルバムだとは思うのですが、ただのパンクにならないのは後のJSBX独自の精神性、世界観を示唆するものと言えるかもしれません。中でもジョンのボーカルは異彩を放っています。
3. White Tail
このボーカルの自由さは後に通づるモノがあるかも。
気を取られているうちにゆっくり曲が展開していく。
4. Maynard Ave.
アバンギャルドなギター小品。
5. '78 Style
単純なギターリフにジョンの自由ボーカルの独擅場。
6. Chicken Walk
同上。一層スカスカしていて前衛性が増している。
11. Write a Song
また前衛的な作品。ジョンがやたら喚いてる。
13. The Feeling of Love
忙しないカウベルとハーモニカ、そしてジョンの突き抜けるようなファルセットが印象的。
15. Rachel
こんな曲調でもただのパンクにならないのはやはり特徴的なボーカルに秘密がありそうだ。
17. Comeback
好きな曲。息が合ってるような合ってないような不思議なツインギターが印象的。
2. Extra Width (1993)
逃げ場のない地下室にロックのパワーがほとばしって隅々まで充満していくような、そんな感覚に襲われる、JSBXの2nd。
後に実験性が増していくJSBXですが、その礎・原点ともいえるアルバムではないでしょうか。
かざらないアレンジ、しかしひねくれたソングライティング、そして圧倒的なパワーによる、渾然一体となった演奏。
それを示すように、ジャケットもいたってシンプル。
重いギターリフ、重いドラミングがズシンズシンと響いてきて心地よい、大好きなアルバムです。
1. Afro シングル曲
1曲目から、雑然としていた前作とは様子が違うのがわかる。ツボを抑えた強烈な演奏が印象的。
2. History of Lies
妖しげで重々しい雰囲気が漂うシャッフル曲。それにジョンの自由なボーカルが乗っかる。
3. Back Slider
強烈なギターリフと、ラッセルのタムを交えた8ビートが渾然一体となり曲が進んでいく。ジョンは・・・これまた自由。
4. Soul Letter
エフェクトのかかったジョンのボーカルが唸りまくるキチガイ曲。どういう発想でこんな曲作るんだ。
5. Soul Typecast
右から聞こえるリズミカルなギターリフを軸にどんどん音が重なっていき、 次第に盛り上がっていく楽しい曲。
6. Pant Leg
カウベルがコンコンコンコンコンコンコンコン狂ったように鳴り響く忙しない曲。
ジョンのボーカルも叫んだり何かを呟いたり忙しそうだ。
ブレイク(25秒、60秒近辺)した後にカウベルが1人寂しくコンコン鳴るのが個人的な笑いどころ。おかしな曲だ。(笑)
7. Hey Mom
ラッセルのドラムが大活躍。
8. Big Road
8ビートを強調した曲だが、だんだんと収拾がつかなくなっていく。 左のギターのリズムが徐々に崩れていく様がおもしろい。
10. Inside the World of the Blues Explosion
ブラッシングでギターをカチャカチャ鳴らす部分と、ギターリフを聞かせる部分に分かれている。
ブラッシングを「しつこく」(笑)聞かせてから、若干の沈黙の後、爽快なギターリフがお目見え。一種のカタルシスを味わえる。
うーん、なんてくだらない曲だ。(笑)
11. The World of Sex
ジョンのキチガイボーカル。
EP. Mo' Width (1994)
タイトルでお分かりの通り、2枚目「Extra Width」のおまけ的なEP。
基本的には同じ路線。というより、「Extra Width」からあぶれた曲たちなのでしょう。
あぶれただけであって、かなり壊れた、前衛的な楽曲も多く、1stの空気も感じますね。
それとも、アルバムに採用しなかったこともあり、まだ煮詰めていない状態の曲が多いからかな?
今では、さらにこのEPからもあぶれた曲もひっくるめ、「Extra Width」時代の曲が満載の2枚組CDが「Extra Width + Mo' Width」として発売されているので、是非そちらをオススメします。
飾り気のない時代のJSBXの、重い音の波を存分に堪能できますよ。
1. Afro
「Extra Width」収録の同曲のバージョン違い。こちらはシンプルなアレンジ。
「Extra Width」の方はシングルということで、凝ったアレンジになっているようだ。シンプルなこちらの方が個人的には好きかも。
4. Rob K is President
疾走感あふれるAメロが印象的。中盤はゆったりとしたギターの掛け合いを見せるなど、メリハリのついた佳作。
5. Ole Man Trouble
オーティス・レディングのカバー。ジュダのシャープで心地よいギタープレイが印象的。
6. Wet Cat Blues
ジュダボーカル。前衛的な作品。
7. Johnson
ラッセルのタイトなドラミングに、薄気味悪いギターリフとハーモニカが乗っかり、延々と3分程度聞かせた後、大爆発。
「Inside the World of the Blues Explosion」とはカタルシスを感じさせるという意味で共通しているが、 いかんせんこちらはちょっとダークすぎる。(笑) だけどとても好きな曲。
9. Lion Cut
かなりアバンギャルドに攻めた佳作。
Bonus Track (「Extra Width + Mo' Width」に収録されていたもの)
1. Relax-Her
2. Fat
4. Bent
非常にダイナミックで単純なリフで押し通す。だけど普通の曲にはならないなあ。好きな曲。
7. Brenda
3枚目「Orange」に同曲が存在。Early Versionでしょう。
9. Train #3 シングル曲
13. Naked
15. Rapp
とりとめのなさすぎる曲だが結構好きな曲。
3. Orange (1994)
JSBXの3rd。この作品から、JSBXの妖しい実験が始まります。
今作も相変わらずパワフルな演奏ではあるのですが、
力量や熱量がダイレクトに響いてくるような、渾然一体となった演奏、ツボを抑えた控えめなアレンジの前作に比べ、 随分自由でやりたい放題やっているように感じられます。
演奏はパワフルでありつつも緩く、アレンジ面ではかなり攻めており、ストリングスやテルミンが活躍。
後半は熾烈を極め、もはや収拾がつかなくなっています。(笑)
地下室での妖しい実験は成功か失敗か? 混沌とし過ぎていて判断が難しいところですが、このアルバムは結果的にはJSBXの出世作。成功と言ってよいのでしょうか?(笑) 是非聴いて確かめて下さい。
今では、この時代の曲を中心としたRemix EP「Experimental Remixes」とセットになった2枚組CD「Orange + Experimental Remixes」が発売されているので、そちらのご購入をオススメします。
1. Bellbottoms シングル曲
出だしから、明らかに浮ついてるストリングスが笑いを誘う。
一方、バンドの演奏の熱量は前作同様。このオープニングはかなり面食らうなあ。(笑)
彼らの妖しい実験で、一体このアルバムはどこへ向かうのか。とりあえず最後まで見届けましょう。
最後の「Bellbottoms」というコーラスも、我々を誘っているかのようです。
2. Ditch
2ndにも通じる、ギターリフ主体の楽曲ですが、2ndと比べると若干緩い演奏・ミックスが印象的。
やりたい放題やってやるぞ、という感じでしょうか。
ラッセルのドラムもちょっとヘロヘロな感じで、楽しんでる様子が伝わってきます。終盤はサックスも入ってきますしね。
3. Dang
パンク的だけど、全然パンクじゃない。(笑)
狂ったように吹かれるハーモニカ、そしてテルミンまで入ってきて、確かにやりたい放題やってますね。
4. Very Rare
ペラペラしたギターサウンドが印象的な小品。ラッセルの絶妙なドラミングも聞き所。
こういう小洒落たギターサウンドの小品は、後々になっても彼らの得意なレパートリー。彼らの作曲力の高さを改めて確認できますね。
時折オルガンが出てきてはギターとユニゾンするのがかわいらしい。
5. Sweat
力の抜けたシャッフル曲。だけど騒がしい。(笑) ラッセルのドラムもカタカタカタカタ忙しそうです。
同じくシャッフル曲の2ndの「History of Lies」と比較すると、今作と前作のスタンスの違いがよくわかるでしょう。
6. Cowboy
ブルージーでゴキゲンなナンバー。
7. Orange
また、謎のストリングスが登場。それも撫でるかのような音量で、思わず笑ってしまう。
一体どういう判断で起用を決めているんだ・・・(笑)
8. Brenda
ジュダの投げやり気味のギターリフと、ラッセルの淡々としたドラミングが印象的。
それをバックに、ジョンが得意げにファルセットを聞かせている。「カモン」だって。(笑)
9. Dissect
重々しい曲。だけど段々と収拾がつかなくなっていく。
2分あたりでみんなでなにかを喚き合っていますが、全く息が合っていないのが笑える。
10. Blues X Man
妖しくて小気味よいギターリフをベースとした、ジョンのボーカルの独擅場。 「Blues Explosion Man」てなんだよ。(笑)
11. Full Grown
ジョンのボーカルが物凄いテンション!!
ギターリフもイカしていていいのですが、中盤から入ってくるテルミンの意味のわからなさたるや。(笑)
12. Flavor
13. Greyhound
Bonus Track
14. Showgirl
単純なリフとテルミンが渦巻くカオス。ジョンのボーカルも気合いが入っていて好きな曲。
16. Haircut
4. Now I Got Worry (1996)
JSBXの4枚目。うーんどうですか。このシンプルながらもどことなく不穏なジャケット。
3や5などのダイナミックなロックサウンドが目立ちがちですが、通して聴くと、かなり不可解なアルバムです。(笑)
強烈なシャウトを聞かせる1で幕開けし、2もパンクですが、5からはやや古典的なロックンロール。
そして10からは勢いは若干鳴りを潜め、ギターサウンドを淡々と聴かせる楽曲が続きます。
15でダイナミックなサウンドに戻ってそのままエンディングかと思いきや、16はかなり実験的な楽曲。 一体なにがしたいんだろうか。(笑)
前作と比較すると、大半の楽曲でスタンダード・古典的なロックに回帰しつつあるという感じがします。 演奏も自由だった前作と比べると、かなりタイトになっています。
しかし実験性、攻めの姿勢は失われてはおらず、この相反する2つの要素が絡み合い、そういった意味ではかなり歪んだアルバムと言えるでしょう。
今では、10数曲ものこの時代のアウトテイクを含めたCDが発売され、そちらがオススメなのですが、聴いてみてビックリ。
クールでオシャレな曲、ダークで型破りな曲と、これまた本編とは違うタイプのクオリティの高い楽曲が、数多く収録されているのです。
不可解に見えるこの作品ですが、おそらく彼らの中には様々な、雑多なアイディアが数多くあって、それを元に思いつくままに録音した楽曲の中から、なんとか一つのアルバムとしてまとめあげたのがこの作品のようなのです。
うーん、いっそ全部収録してしまえばよかったんじゃないか、とまで思ってしまいます。(笑) そうするとちょっと長すぎるのかな。
彼らの中にある鮮烈な衝動が、先鋭化し色々な方向に発揮された、稀有なアルバム。
特に1から3までの流れは秀逸で、意図的なものを感じます。 そこまで聴いてしまったら最後、あとは彼らの不可解な世界観を堪能しましょう。(笑)
1. Skunk
うるせえ!!(笑) うるさく長いシャウトの後はペラペラしたサウンド。
聴き手の期待を煽る秀逸なオープニングで、パンク的なサウンドを予感させますが、 このアルバムはそう簡単にはいかないのです。(笑)
2. Identify
1分程度のパンク。キラーチューンである3曲目への絶妙な橋渡し。
3. Wail シングル曲
2曲目が終わった途端、突き刺さるようなギターサウンドでのめり込み気味に始まる今作のキラーチューン。最高にカッコいいです。
4. Fuck Shit Up
箸休め的な実験的楽曲。ジュダがボーカルを取っている。
5. 2Kindsa Love シングル曲
慌ただしく騒がしいギターリフが印象的な痛快なロックンロール。
6. Love All of Me
同上。しかしただの焼き直しにならないだけの音作りや演奏・アレンジの巧みさがある。
7. Chicken Dog
ルーファス・トーマスとのコラボレーション。
8. Rocketship シングル曲
お洒落な小品。激しい楽曲だけではない、彼らの大きな魅力の一つ。
9. Dynamite Lover
5,6と同じ路線。渾然一体となったパワフルな演奏で、かなり聴き応えがありますね。
10. Hot Shot
ここからはギターサウンド主体の小品が続きます。
一つ一つ個性的で味があって、彼らの作曲力の高さを再認識できます。
13. Eyeballin
15. Get Over Here
全てがダイナミックなサウンド!!終盤で爆弾を投下といった感じですかね。
16. Sticky
そのままの勢いでエンディングかと思いきや、最後の最後はこんな実験的な楽曲で締めるのでした。
Bonus Track
17. Cool Vee
ヒップホップの要素も入ったクールな小品。
ちょっとクール過ぎたので外されたのでしょうか。(笑) クオリティは高いと思う。
18. Fish Sauce
ファンキーな佳曲。ラッセルのタメを効かせたドラミングが心地よい。お洒落なキーボードも聞こえる。
19. Yellow Eyes
うーんおかしな曲だ。ジョンのボーカルはキチガイじみており、後ろでコンガやギロが妖しく響いている。
JSBXのダークで型破りな世界観を上手く表現しているようで、好きな曲。
20. Turn Up
こちらもダークな世界観。厳かで薄気味の悪い感じ。
21. Buscemi
20と同じ。ギターリフのメロディ、音色が不気味。
1分10秒付近で突如リズミカルなワウギターが雪崩れ込んできてビックリ。この発想はどこからくるんだろうか。
おもしろそうな曲なのに、演奏の途中でフェードアウトしてしまう。未完成品なのかな。残念。
22. Get with It シングル曲
やたら攻撃的でジェットーコースターのような勢いのシングル曲。呆気にとられている間にあっという間に終わる。
23. Let's Smerf
カオス。軍隊のような掛け声が印象的。
24. Down Low
5. Acme (1998)
JSBXの5th。どうですか、「Acme(絶頂)」というタイトルに、この蛍光色で刺激的なジャケット。
これを見れば、今までの路線を発展させた、より破壊的でパワーあふれるロック・サウンドが聞ける、と誰もが思うでしょう? しかしそこは天邪鬼なJSBX、確かに大いに刺激的ではありますが、そう簡単にはいかないのです。(笑)
フタをあけて見ると、展開されるそのサウンドにはソウルフルでファンキーな魔法がかかっているではありませんか。
しかし、ただのソウルではおもしろくない。サンプリングやミキシングが大胆に効果的に用いられており、時にカオス。 そこは彼らの実験精神の現れです。
全体的には乾いた音、ミックスが印象的で、彼らの演奏力からするとストレートに録音すればそれなりに聴き応えのあるソウルなアルバムになると思うのですが、そうしないのは天邪鬼な彼らならではといったところでしょうか。
優しくてポップな楽曲でも、どこか異様な雰囲気が漂っているように感じられるのは、そういうところに原因があるのかな。
そして、随所に前作までのJSBXの要素も感じられます。そういった所を探すのもおもしろみの一つでしょう。 とはいえ、2などはオシャレすぎて呆気にとられますけどね。(笑)
タイトルといい、刺激的なジャケットといい、それに反した、今までのサウンドとはガラリと変わった突拍子もない作風といい。 天邪鬼な彼らの歪んだポップセンスが、思わぬ形で出現。経緯を含めて、人を喰ったようなアルバムですね。
1. Calvin シングル曲
イントロから、乾いたギターとドラムが響いてくる。 サンプリングも効果的に用い、非常にダンサブル。
2. Magical Colors シングル曲
こちらもソウルフルでダンサブルな今作のキラーチューン。
うーん違うバンドになったみたいだ。エンディングがオシャレすぎて信じられないくらい。(笑)
3. Do You Want to Get Heavy?
またソウルを感じさせる楽曲だが、1分10秒付近から突如、前作までのノイジーなJSBXが乱入。ダイナミックなアレンジの佳曲。
4. High Gear
うーん、オルタナ系の匂いがする。こういう楽曲は珍しいなあ。
5. Talk About the Blues シングル曲
ジョンのボーカルの独擅場。しかしオケが実験的すぎて呆気にとられる。まさに今作品、JSBXの実験精神のACME。
7. Lovin' Machine
ジュダのファンキーなギターリフが印象的なポップチューン。 ジョンの歌声もクール。ラッセルのドラミングは大きな縦ノリを作り出す。
8. Bernie
こちらもファンキーな楽曲だが、 リズムといい、ジュダのスライドギターといい、サザン・ロックを若干連想させる。
後半は例によって(笑)収拾が付かなくなり、JSBXらしい破壊的な世界観がよく表現されている。
9. Blue Green Olga
ここからは曲のベースは前作までのJSBXっぽいのですが、どこかソウルを感じさせるアレンジになったオシャレな楽曲が続きます。
11. Desperate
12. Torture
この曲なんかはリフ自体は前までの作品にあってもおかしくないのに、見事にオシャレに変身を遂げている。
13. Attack
EP. Acme Plus (1999)
「Acme」時代のアウトテイクを中心としたEPは、この「Acme Plus」を中心として「Ura-Acme」「Extra-Acme」など数々発売されており、 今では「Acme + Acme Plus」という2枚組のCDが発売され、アルバム本編含め、そちらでほぼコンプリートできます。
Amazonなどでは「Acme + Xtra Acme」といったタイトルになっているみたいですが、基本的には同じものです。
これまでにない作風で、なおかつ実験的な作品となった「Acme」には、複数のプロデューサーが起用されており、 同じ楽曲も一部複数人によって別々にプロデュースされています。そういったプロデュース違いの楽曲もまるごと収録されており、比較して楽しむことができます。
かなり「Acme」の制作過程は複雑だったであろうと予想されますから、そのアウトテイクというのはなかなか興味深いものですね。 試行錯誤しているのが感じられ、収録されている楽曲もバラエティ豊かです。
このアウトテイクを含めた2枚組CDそのものこそ、JSBXの世界観であると言えるような気がしないでもないですね。
以下の曲目は「Acme + Acme Plus」についてきたBonus Trackです。
Bonus Track (1枚目)
14. Right Place, Wrong Time
ドクター・ジョンのカバー。非常に弾けていてJSBXらしく、心地よいです。
15. The Black Godfather
勢いのある曲調で、ファンキーなギターリフ。こういう曲もお得意ですね。
16. New Year (Destroyer) シングル曲
こちらはパンク的。
17. Confused (Sansano)
2枚目「Extra Width」に収録されていてもおかしくないような強靭なリズムが印象的。好きな曲。
Bonus Track (2枚目)
1. Wait a Minute
モービーがベーシストとプロデューサーとして参加している。
左から聞こえるクラビネットがかなりイカしていてかっこいい。1分40秒付近からの展開はJSBXにしては新鮮。好きな曲。
5. Not Yet
こちらもファンキーなギターリフか印象的。こういう(JSBXとしては)ストレートなアレンジでも十分かっこいい。
6. Get Old
7. Bacon
こちらは3rd「Orange」に収録されていてもおかしくないような、雑多で自由なアレンジ・演奏。なにより謎ストリングスが。(笑)
9. Heavy (Stimulated Dummies) シングル曲
本編「Acme」の3「Do You Want to Get Heavy?」のRemix。
10. Lap Dance
14. New Year
16. Chowder
22. Shhh
6. Plastic Fang (2002)
JSBXの6th。前作「Acme」で実験的な姿勢を見せつけ、世間を驚かせたJSBX。今回もやってくれました。(笑)
まず1曲目からビックリ!!!なんだこのストレートなロックンロールは。(笑)
ひねくれていて、実験精神にあふれていたJSBXはどこへやら。2曲目以降も、痛快なロックンロールを延々と聴かせてくれるではありませんか。
いやあこうなると、飛び道具的だった前作が、今作のための最高の演出に見えてくる。 それ以前も十二分にひねくれた音楽を聴かせてくれていた彼らですが、思わず「おまえら・・・どうした?」と言いたくなる。(笑)
まるで「小細工なんて必要ないんだ」と主張しているかのようですが、いやいや、いくらか反動があったとしても、前作があの「Acme」ですよ?自作自演なんじゃないの?(笑)
まあ意図はともかく、古典的なロックンロールを、彼らならではのパワフルな演奏で「ストレート」に「正面突破」していく様はまさに痛快の一言。聴いている側が戸惑っていようが、ねじ伏せられる他ありません。
この一番ストレートもストレートな作品が、音楽性の変遷からすると彼らの中では異色中の異色な作品であるとも言えるのは、なんともおもしろい。ある意味、一番「天邪鬼」な作品なのかもしれません。
日本版と欧米版では収録曲が若干異なりますが、日本版がオススメです。日本のみ発売のEP「Fang Plastique」を別途購入すれば、欧米版のみ収録の楽曲もコンプリートできます。以下は日本版収録の曲目です。
1. Sweet n Sour シングル曲
今作のキラーチューン。どうですか、曲といい、アレンジといい、歌詞といい、いちいちストレートで笑うでしょ?(笑)
一番笑えるのは45秒、1分12秒付近などでブレイクした後に、ラッセルがバスドラムとスネアドラムで得意げにアクセントを付けるところ。 「Orange」や「Acme」をリリースしたバンドとは思えない。(笑)
これが本当にJSBXなのか?と思わず狐につままれたような気分になるほどストレートで痛快な佳曲です。
2. She Said シングル曲
こちらも今作のキラーチューン。こちらは非常によく出来ていて、思わず感心してしまいます。好きな曲です。
3. Money Rock'n'Roll
いやあ、しかしこのホントにド直球なタイトルと歌詞はどうにかならんのか。(笑) 思わず苦笑してしまう。卑怯ですよねえ。
4. Ghetto Mom シングル曲
こちらもただただストレートに突き進んでいく。痛快の一言。
5. Alex
ジョン独特のセリフ調の歌い回しは流石ですね。ストレートなものにもガッチリ合うなあ。
6. Hold On
こちらもジョンのセリフ調のボーカルが炸裂。ゆったりとした曲調で、ちょっとクールダウン。
7. Over and Over
ジョンとジュダの絡み合うギターリフが心地よい。これは4th「Now I Got Worry」あたりに収録されていてもおかしくないかな。
11. The Midnight Creep
一体感のある演奏がとても印象的。ラッセルのドラミングが非常にパワフルで、心地よい。
EP. Fang Plastique (2002)
日本限定のEP。日本版の「Plastic Fang」と合わせれば、「Plastic Fang」時代の曲はほぼコンプリート可能。
もちろん同じ路線の楽曲が並んでいますが、こちらはゆったりとした曲調の曲が多いですね。
1. Maureen
4. Do Ya Wanna Get It?
ミドルテンポだが威圧感たっぷりで圧倒される。
5. Point of View
いい感じに壊れている。「Orange」時代の空気を感じさせる佳曲。
7. Damage (2004)
「ブルース・エクスプロージョン」名義で発売された、JSBXの7枚目。名義は後にまた元に戻っています。
前作で古典的なロックンロールをストレートに、そのままに見せつけたJSBXですが、この作品ではその路線をある程度ベースにしつつも、 ヒップホップなどの現代的な手法を大胆に使い、上手く自身を演出しています。
なんというか、この作品になって、やっと自我を獲得したというか。(笑) 今までの、衝動に忠実な闇雲な感じではなく、ナルシズムが見え隠れする感じ。
ヒップホップを含めた様々な音楽の要素を駆使して、メリハリのあるダイナミックな演出で、スタイリッシュなJSBXを表現。
そして音はなんというか、硬い感じがする。ヒップホップの、打ち込み的なものの影響なのかはわからないですが、 タイトで硬質的な音世界を構築していますね。
聴き手に対する見せ方を強く意識しているのが感じられる、スタイリッシュなアルバム。 ただ例によって演出過剰で節操のないところがあり、そこがまたおもしろいところかな。(笑)
1. Damage
始まりを宣言するかのようなタイトル曲。このアルバムの方向性をよく示した曲だと思います。
最初のギターリフといい、ラッセルのドラムといい、なんかやたら硬いでしょ?
1分40秒あたりからはブレイクビーツ的な、ヒップホップ的な手法を取っていますね。
2. Burn It Off シングル曲
流れるようなジュダのギターリフが印象的な、前作の流れを汲んだキラーチューン。 音が硬くパワーがよく伝わってきますね。
3. Spoiled
妖艶でオシャレなアコースティック曲。
4. Crunchy シングル曲
ゆったりとしたロックのグルーヴに揺られる、ミドルテンポのキラーチューン。
ジョンのボーカルがセクシー。アレンジも非常に凝っており、キーボードやタンバリンも入ってきて、リズミカルな曲調を支えます。
5. Hot Gossip シングル曲
パブリック・エナミーのチャックDをフィーチャーしたヒップホップ・トラック。
6. Mars, Arizona
ジョンのボーカルとギターリフの掛け合いが楽しいロックな小品。
7. You Been My Baby
イカれたR&Bバラードといった感じかな。
8. Rivals
9. Help These Blues
バンドのナルシズムを体現したかのような曲の展開、歌詞が印象的。
10. Fed Up and Low Down
ヒップホップ的なメリハリのあるダイナミックな演出が印象的。
11. Rattling
Bonus Track
13. Grinding
2と同じ路線のロックンロール。好きな曲。
8. Meat + Bone (2012)
8年の充電期間を経て発売された、JSBXの8枚目。
この復活作では、彼らのルーツであるガレージ・ロックに大きく接近。
6th「Plastic Fang」は古典的ロックンロールでしたが、もっと初期衝動を大切にして、音・演奏が荒い感じでしょうか。8年ぶりの復活としては、文句なしの采配でしょう!
演奏はタイトかつパワフルで、隙のない感じ。ガレージ・ロック的な非常に荒いアプローチだけど、一切隙のないタイトな演奏を聴かせているのは、ちょっと斬新かもしれない。意図したものなのだろうか。
そして音は現代では有り得ないほど大きく歪んでいて、思わず苦笑。 いちいち彼らは極端なんだよなあ。(笑)
でもそこが彼らの愛らしいところでもあるし、なにより演奏にバッチリ合っている。 ジョンのボーカルもテンションMAXで、その音に負けていませんよ!!
2,4,7など、ところどころに遊びもあって、今後の活動の展開にも大きく期待させる佳作です。
1. Black Mold シングル曲
曲といい、演奏といい、アレンジといい、ミキシングといい、まさに正しくガレージ・ロック!!(笑)
復活して名前も戻して、まずは小手調べといったところでしょうか。パワフルなオープニングで聴き手の期待を煽ります。
2. Bag of Bones シングル曲
3rd「Orange」を彷彿とさせる、小気味よいギターリフと自由なジョンのボーカル。
ただし演奏はタイトで、大きな縦ノリのリズムが印象的。ラッセルのパワフルなドラミングが光ります。
3. Boot Cut
JSBXお得意の曲調。お馴染みすぎて手癖で作った感満載ですが、それももはやご愛嬌。
4. Get Your Pants Off
いきなりファンク調のカッティングで思わず失笑。この堂々とした肩透かし感。(笑) 手のひらで踊らされてます。
5. Ice Cream Killer
非常にタイトで濃密なガレージ・ロック。
7. Bottle Baby
慌ただしいギターリフが印象的。案の定後半には収拾がつかなくなる。
8. Danger
疾走感のあるガレージ・パンク。
9. Black Thoughts
ローリング・ストーンズを彷彿とさせる冒頭のギターリフ、サビのメロディが印象的。テンションの高いボーカルと演奏に圧倒される。
10. Unclear
ゆったりとしたブルース。しかしジョンのボーカルとラッセルのドラミングがやたら攻撃的だ。
11. Bear Trap
12. Zimgar
Bonus Track
13. Tell Me That You Love Me
14. Gadzooks
9. Freedom Tower: No Wave Dance Party 2015 (2015)
前作ではガレージ・ロックで華々しく復活したJSBXの、注目の9枚目。
混沌としたアルバムタイトルに、混沌としたジャケット。それが象徴するように、やはり一筋縄ではいかない作品となっています。
全体としては、とても乾いた音作りが大変印象的。
そしてジュダは動き回る忙しないギター、ラッセルはグルーヴィーでタイトなドラムを聴かせ、それをバックにジョンのほぼ語り口調のボーカルが炸裂しています。
そして注目なのが天才的・変態的なソングライティング。今まで通り展開がダイナミック過ぎてこちらが呆気にとられてしまうような曲もありますが、
特に2など、多彩で変態的な展開を実は効かせているのに、聴き手に滑りこむように馴染んでくるような、そんなスマートな曲が多数あるのが特徴。 妖しげな雰囲気に呑まれている間に、彼らの世界観に取り込まれてしまいます。
ジュダの歯切れがよく、それでいて的確なギターもそうですが、よく聴けばとても緻密で意図的な物を感じます。
前作が比較的ストレートなモノだっただけに、今作は自由な、アグレッシブな物が来るんだろうな、という気がしてはいたんですが、 そこはやはりJSBX、一筋縄ではいきませんね。(笑)
いろいろなジャンルの要素も取り込んでいて、こんなにおかしなアルバムなのに、不思議ととっちらかった印象はない。乾いた音作りが一貫しているところにもその意図はなんとなく感じられるのですが、いやはや、お手上げです。(笑)
1. Funeral
ジョンの軽快な語りかけで始まる、小手調べ的な楽曲。
しかしよく聴くと、展開は多彩で急なのがわかる。オープニングから、乾いた音が印象的。
2. Wax Dummy
イントロから、アクセルをゆっくり踏み込んでいくような、突き進むようなリズムが印象的。
その後、グルーヴィーなラッセルの乾いたドラムと、キュイーンとした高音のギターが響き、ジョン独特の語り調ボーカルが続く。
その後も曲は怒涛のように展開していく。展開の繋ぎ目が滑らかすぎて全く違和感がないが、かなりおかしな曲。
JSBXの天才的、変態的なソングライティングと、それを支える演奏力を堪能できます。
3. Do the Get Down
乾いたギター・ドラムが跳ねまわるのを尻目に、ジョンの軽快なラップが響く。ラッセルのドラミングが絶妙でシビれる。
4. Betty vs. the NYPD
ポップな本作のリードトラック。うーん、圧巻。力の抜けた、ベテランらしいツボを抑えた演奏を聴かせてくれる。
一番笑えるのは、1分10秒付近から始まるギターソロ。ふはは、ちょっと気取りすぎなんじゃないの?(笑)
2分足らずであっけなく曲が終わってしまうのもなかなかニクい演出。うん、もう狙ってやってますねこれは。(笑)
7. Down and Out
ジュダのやたらと動き回るギターがとても印象的な、ファンキーな佳曲。
8. Crossroad Hop
JSBXお得意の収拾がつかなくなっていく曲だが、なんと後半はダンス曲に転身。まあ、アルバムタイトルがああだからね。
10. Dial Up Doll
パワフルで展開もダイナミックな佳曲。
11. Bellevue Baby
ソウルでファンキーな曲だが、完全に自分の物にしている。まるで昔からこういう曲を演奏してきた人たちみたい。(笑)
乾いて歯切れのよいジュダのギター、グルーヴィーなラッセルのドラム。ジョンのボーカルも、よくハマっている。
2分10秒付近からはジョンのギターソロ、その後多彩な展開を見せてダメ押し。ベテランの経験が活かされた名曲。
12. Tales of Old New York: The Rock Box
イントロから、ロックンロール丸出しの手垢のついたボーカルとギターの掛け合いに思わずニンマリ。(笑)
13. Cooking for Television
前曲で熱い(笑)掛け合いを見せて盛り上げてから、こんな曲でクールダウンしてアルバムは終了。
この肩透かし感も、JSBXならでは。
曲の中盤にはギターソロなど申し訳程度の盛り上がりを見せつつ、最後の最後はジョンのラップ調のボーカルでスタイリッシュに締める。
ちょっと憎たらしいほどカッコいいエンディングだ。(笑)
Bonus Track
14. Grudge Match
ラッセルの乾いたバスドラムがズンズン響いてくる、大きな縦ノリの佳曲。
エフェクターで歪んだジョンの自由なボーカルも楽しい。
15. Human Obscene
パンク調だが、多彩な展開を効かせる楽しい曲。2分足らずなのに濃いなあ。

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